支援先工場の現場で私が実践していることを8つ挙げています。
1. あるべき姿を押し付けない
経営のあり方や仕事の進め方などにおいて、会社のこれまでの歩みや現在の制約などをふまえずにあるべき姿を押し付けるということがコンサルタントの良くないイメージの一つとしてあるかと思います。
私は、このようなことは決して行いません。社長や社員の皆さんのお考え、会社におけるヒト・モノ・カネの制約、財務状況、顧客動向、仕入れ先や協力会社さんとの関係などを総合的に勘案し、「よかれと思うこと」を提案します。
その際、単に複数解を提示し、回答を丸投げすることは決してしません。例えば会社としての方向性や業務改善の進め方などにおいて、A案、B案、C案といった複数の案がある場合、それらのメリットやデメリットなどを整理した上で、「私(島ノ内)はB案をお勧めします。その理由は・・・」というように推奨する案とその案を選んだ理由を明確にお伝えします。
2. ヒアリングを重視
コンサルティングの初期段階では企業内の様々な管理資料の確認や社内諸会議に同席といった現状把握だけではなく、社長はじめ社内関係者と十二分にすりあわせを行った上で、社長およびできるだけ多くの従業員の皆さんとお会いし、「これまでどのような業務を担当してこられたのか」「現在の業務での課題や問題は?」「今後、会社の収益を高めるためにどのようなことが必要だと思いますか」といったことを問いかけ、皆さんの率直なお考えをお伺いします。
正社員さんだけでなく、派遣さんやパートさん、アルバイトさんにも聞いたりします(ですので、よく現場をウロウロしています)。
場所は会議室だったり、現場だったり、事務室だったり、食堂だったり様々です。
またコンサルティングの初期段階だけでなく、支援がある程度進んできた中間段階においても時間の許す限りヒアリングを行います。それは業務改善などの様々なプロジェクトを推進していく際、社内の限られた皆さんだけと一緒に行う場合があり、様々な形でプロジェクトの結果に影響する皆さんのご意見もしっかりと踏まえておく必要があると考えるためです。
3. 意見交換を重視
上述のようにヒアリングを重視しつつ、私の意見や提案などを社長や従業員の皆さんに対し率直にお伝えし、ご意見を伺う意見交換も重視しています。
これは「会社を良くする優れたアイディアは意見交換から生まれる」ということがコンサルティングにおける私の信念だからです。
会社の内部事情をよくご存じだけど、客観的に見ることが難しい面がある会社の皆さんと、会社の内部事情を詳しくは分からないけど(もちろん日を追うごとに詳しくなります)、取引先などの視点で客観的に見ることができる島ノ内との間で意見交換を何度となく重ねることで、会社を良くする、つまり収益を今以上に高めたり、社長が「この会社をやってて良かった」とあらためて思って頂けたり、従業員の皆さんが今以上に働き甲斐を感じて頂けたりする機会をこれまで数多く提供してきましたし、これからも続けて行きたいと思っています。
4. 成果・結果にこだわる
コンサルタントが社長や従業員の皆さんに何十時間もヒアリングしても、コンサルタントが社長や従業員の皆さんと何十回も意見交換しても、またコンサルタントが会社の何十、何百におよぶ管理資料を拝見しても、その結果として、会社が期待する何らかの成果や結果につながらなければ無意味だと考えています。
「3年連続、経常赤字なので、まずは今期と来期の2年かけて単年度経常黒字化したい」
「メインの金融機関から事業デューデリ(実態精査)と経営改善計画書を求められているのでこれらの作成を支援頂きたい」
「3S(整理整頓清掃)活動がマンネリ化しているので活性化し、根付かせたい」
「仕事に必要な資格の有資格者を増やしたい」
「総じて社員に元気がないので、元気のある会社にしたい」
など企業が期待される成果や結果は様々です。
上記はあくまでも例ですが、このような島ノ内に期待される成果や結果をコンサルティングのご依頼を頂く際、まずお伺いするようにしています。
5. 企業に長時間います
昔ながらの顧問契約のスタイルにありがちかと思いますが(もう最近は少ないのかもしれませんが)企業に訪問し、経営全般のよろず相談を1~2時間だけ受け帰るというコンサルティングは私は行いません。
朝から夕方、場合によって夜8時9時までほぼ丸一日どっぷりと企業にいて、いくつかのテーマについて、社長や従業員さんと密にコミュニケーションを取りながら諸課題の解決の支援を行っています。
スケジュールの一(いち)例を挙げますと;
- 8:00~9:00 朝礼および朝の清掃を見学後、これらの改善点について意見交換
- 9:00~12:00 事業計画作成会議
- 12:00~13:00 午前中の内容をふりかえりがてら、社長と昼食
- 13:00~15:30 支援テーマA(例えば整理整頓の推進)について社内関係者と会議
- 15:30~17:00 支援テーマB(例えば人材育成)のため従業員Mさん、Nさんと上司が行う各40分程度の個別面談同席
- 17:00~ 支援テーマの内容を社長に報告。その後、金融機関対応などについて意見交換
6. 「そもそも」を問いかける
多くの会社が必要最小限の人員で仕事を進めている中、目先の仕事を何とかこなすことで精一杯となり、業務の効率化や顧客クレームの根本原因の解決といったことが後回しになっている会社が多く見受けられます。
また「営業からの注文書に記入モレが時々あるけど、今さら言ってもカドが立つしなぁ」など社内でありながら遠慮してしまい、問題が顕在化していない場合もあります。
少々後回しとなっても、改善や解決が後日しっかりと行われればとくに問題ではありませんが、多くの場合、後回しでなく、結局何ら改善や解決がなされず、基本的に数年前と同じレベルで仕事を繰り返しているようでは、日々地道に努力している同業他社に比べ、競争力が失われ、間違いなくじわじわと収益が低下していきます。
企業が経営コンサルタントに期待する役割の一つに、社内外の無用なシガラミにとらわれず、自由な立場から意見を言う、ことがありますので、
「そもそも今回のミスが生じた原因は?」
「そもそも今回の顧客クレームの原因は?暫定対策だけでなく恒久対策は明確?」
「そもそも現在使用している営業からの注文書の様式は必要十分な項目?」
といったことを問いかけ、根本原因を顕在化させたり、根本解決につながるようにしています。
こんなことを顧客先の会議で時々言うので会議が長くなることがあり「島ノ内さんが来ると会議が長くなる」という不平も社員さんから聞こえますが、同じようなミスやクレームをもぐら叩きのように繰り返していては顧客が離れていくのは明白ですので、結果として支援先企業の収益が高まるよう「そもそも」の問いかけは遠慮せず今後も続けていきます。
7. 社長への直言は一対一で
コンサルティング会社で5年働き、その後独立して10年が経ちました(H25年6月時点)。コンサルティング会社で働いていた頃は、上場企業や欧州等に本社がありグローバルに展開する企業が顧客でしたし私自身の職位がたいして高くありませんでしたので、部長や役員クラスと話をすることがあっても、経営トップと直接話をする機会はほとんどありませんでした。しかし2003年に独立してからは、従業員数が多くても二~三百名の会社を支援させて頂いておりますし、ご依頼主が部長さん等ではなく経営者という理由もありますので経営トップと頻度高くお会いします。
朝礼や会議などで社長が従業員さんに話された内容や話し方などで私が「あれっ、それは少しまずいな」と違和感を感じた場合、従業員さんの前で社長に伝えることは絶対せず、社長室など社長と一対一となった場でお伝えするようにしています。
社長の意図を私が誤解しているかもしれませんし、たとえ些細なことであっても社長さんの社内でのお立場を少しでも下げることがないようにという思いです。
近い将来社長となられる後継者の場合、私より年下の場合も多々ありますが、同様に一対一で話をするようにしています。
8.「人の育成」を重視
企業が今年来年で終わりなのであれば、従業員の皆さんの現在の実力で何とか業務を遂行していけば十分ですので、人の育成は不要です。
しかしこれから5年、10年、数十年と会社が存続し、さらに可能な限りの成長をお考えなのであれば、私が敢えて書くまでもなく、多様化、高度化する顧客ニーズに対応するためには人の育成は不可欠です。
現在10の力量があり伸び代がある正社員のAさんは半年かけてプラス3を、残念ながら現在6の力量しかなく伸び代がわずかしかないパートのBさんは1年かけてプラス1をといったように、従業員の皆さんそれぞれの力量や伸び代、勤務時間の制約などをふまえ、仕事力をつけて頂くような育成を支援しています。
日本国内だけでも数百万社の企業がある中、たまたまのご縁で自社で働いて頂いている従業員の皆さんがそれぞれ今以上の力を付けて頂くことでしか、会社の存続と成長はあり得ません。
補足ですが、明確な昇進規定があり、その昇進規定に基づき昇進(および降格)がしっかりと運用されている中小企業もありますが、数十名規模の中小企業の場合、昇進規定が明文化されていないことも多々あります。
仮に昇進規定があっても、従業員の皆さんそれぞれがその規定に見合う力をつけなければ、昇進規定を定めること自体無意味です。
このような実態をふまえ「会社が昇進、昇給したくなる人材を目指しましょう」と支援先の社員さんに私はよく言います。
一般社員は課長が、課長は部長が、部長は役員や社長が、それぞれ仕事内容の評価や指導をしますが、社長に対しては誰も評価や指導はしてくれません。
競合他社より優れた商品やサービスを提供しお客様に喜んで頂けるのも評価の一つと言えますが、会社の資産や負債などを表す貸借対照表や売上や利益などを表す損益計算書といった決算および本業と本業以外の儲けを表すキャッシュフロー計算書などが会社としての評価のすべてと言えます。